2008年2月7日木曜日

削りすぎる歯医者の後で

 かつて、歯は極力削らないほうが良いという、老齢の歯科医にかかったことがあったけれど、彼の気のいい話しっぷりに、魅了されたことを良く覚えています。

 わけあって彼の医院に行くことはもうなくなってしまったけれど、ながらく検診にも行っていなかったので、仕事を始める前に行っておこうと、近所の歯科に行くことにした。
 検診の結果、虫歯はないと診断された。そのあと、彼は昔の治療跡をみて、治療が中途半端なので、削りなおして、新しい金歯を入れたほうがよいといった。そのとき、不安がよぎらなかったといえばうそになるけれど、歯の健康上、現状はよろしくないという話を聞かされると、納得せざるをえず、治療をお願いした。
 文字通り、お願いするや否や、彼は注射器を僕の歯茎につきたてた。あっという間に上あごの右半分の感覚がなくなった。麻酔が効き始めると、すぐさま手術が開始された。まず、古い治療箇所が削り取られた。そこで、手を止めた歯科医は、「やはり汚れてますね」といいながら、その周囲の歯を削って行った。僕の不安は増していった。削りすぎではなかろうかと。なんせものすごい勢いで自分の歯が減っていくように、感じられたからだ。不安ながらも口をあけたまま、されるがままだった僕は、「うーん、もうちょっと」とつぶやきながら削り続ける彼の作業の終了が全うなものであることを祈りつつ、終わるのを待った。 そして、オペレーションの終了が告げられ、うがいを促されたとき、初めて舌で削られた部分に触れたとき、小さく削られ埋められていたはずの傷口があった箇所には、大きな穴が開いてしまったことを確認し、大きな落胆を感じたのだった。
 うがいをしながら、脇に立つ助手に目をやると、彼女は手をぷらぷらさせながら、次の作業を待っていた。
 まあ、しかし、なんと仕事の速いことだろうか、レントゲンを撮って、麻酔、削り、型取りまであわせても二十分もかからなかったように思う。
 これが、いい仕事なのかどうか、素人の僕にはわからないけれど、虫歯の原因が、歯の質や、食生活や、歯磨きにあるのだとすれば、本人が食生活や歯磨きを改善しなければ、もう一度虫歯になる可能性は高いのではなかろうか。
 僕は比較的長い時間をかけて歯を磨くほうだけれど、僕より虫歯の多い人でも、僕より簡単な歯磨きで済ませる人が多い気がする。もちろん磨く時間だけが問題ではないだろうけど、多くの人は、虫歯になっても、また同じように歯を磨くし、同じように食事するんじゃなかろうか。特に大人は。
 削ってもまた虫歯になるなら、大切な歯を急いで削ってしまうことはないんじゃなかろうか。虫歯にもなってないのに。

もういかね。

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